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急性膵炎・慢性膵炎に対する薬物治療

急性膵炎・慢性膵炎に対する薬物治療について

 急性膵炎も慢性膵炎も膵臓で作られる消化酵素が自分の膵臓を溶かしてしまうことが問題です。急性膵炎では、治療にあたってまず造影剤を使ったCTで重症度を評価することが重要です。いずれの急性膵炎でも、膵臓のやけどと同じ状態と考えられます。食事をすると膵臓から消化酵素を出そうとしますので膵炎は悪くなりますので、食事をとめて膵臓を安静にしなくてはなりません。やけどのときは流水で冷やすのと同じく、たくさんの点滴をしてあげることが必要です。

 急性膵炎では腸が動かなくなりますので腸が動き出せば、できるだけ早く点滴に頼るのではなく腸を介した栄養補給をすることがいいとされています。軽症例では食事の再開、重症例では鼻からチューブを入れて栄養剤を投与します。抗菌薬は、いまでは軽症では基本的に使いません。痛み止めは、積極的に使うことが勧められています。

 よくなればそのあとは、基本的に飲み薬は不要になりますが、急性膵炎がなぜおきたのか原因を探すことが重要です。

 慢性膵炎では、食事と薬による治療になります。膵臓には消化酵素を十二指腸にだして食物の消化吸収を助ける外分泌とインスリンをはじめとするホルモンを血中に分泌して血糖をコントロールする内分泌という2つの機能があります。慢性膵炎は痛みを繰り返す代償期から移行期を過ぎて膵臓の機能が荒廃してしまった非代償期になると痛みがなくなります。

しかしこのような状態になってしまうと、膵臓の機能は荒廃していますのでインスリンが十分に出せなくなり膵性糖尿病という糖尿病になってしまったり、消化酵素が十分に作れなくなり消化吸収が十分にできない状態になってしまいます。
痛みを繰り返す時期は、脂肪分を控えて膵臓に負担をかけないようにするのがいいとされています。そのため脂肪分の低い栄養剤を調子が悪くなりそうな時に摂取するといいという報告もあります。

痛み止めにはいろいろな種類がありますので段階的に強い薬を使う必要があります。また膵臓への刺激を減らすために抗コリン薬、消化酵素薬の投与、膵炎の痛みを和らげるとされる蛋白分解酵素阻害薬を使います。非代償期になると膵臓の機能が著しく低下しますので、腸で溶けるパンクレアチン製剤による消化酵素の補充とインスリンによる血糖コントロールが必要となります。膵性糖尿病は普通の糖尿病に比べ血糖コントロールが難しいとされています。

近年注目されている早期慢性膵炎という状態であれば、蛋白分解酵素と胃酸を下げるプロトンポンプ阻害薬を使うと慢性膵炎への移行が遅らせられることが知られています。しかし早期慢性膵炎はきちんと診断することが重要です。
いずれにしてもお酒を飲まれている場合は、禁酒は絶対に必要です。特に慢性膵炎ではタバコもよくないことがわかっていますので生活習慣を改めることがまずは重要です。

 

Q1慢性膵炎になると治らないのでしょうか?

慢性膵炎は進行性かつ非可逆性と定義されており基本的に治ることはありません。代償期という症状が出る前には潜在期と言って症状がでないけど炎症が進んでいる時期があります。ですので慢性膵炎と診断されてしまった方は、生活習慣を改善して残された膵臓の機能をできるだけ大事に保つことが重要です。

Q2急性膵炎は入院しないといけないのでしょうか

急性膵炎の治療は、膵臓の安静と点滴です。急性膵炎でも重症化して重症急性膵炎になると命に関わることがありますので、きちんと入院で治療を受けるべきです。

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