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腹部超音波検査

腹部超音波検査について

 腹部超音波検査(腹部エコー)は、腹部の臓器を評価するために超音波を用いる診断方法です。この検査は、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、脈管(大動脈など)や腹部内の腫瘍などの状態を簡便に調べるために健康診断を含め広く用いられています。レントゲンやCT検査と違って被曝の恐れもなく、痛みもない、受診者の身体的負担の少ない検査で、安全に多くの情報を得ることができる検査です。

この検査を行うことによって、異常や疾患を早期にみつけられる可能性があります。また健康診断のように毎年受診することで、指摘された疾患の変化を観察することも可能です。費用は、健康診断で5,500円、保険適用(3割負担)だと1,650円程度です。

腹部超音波検査の実際

 検査ですが、基本的には仰向けでおこないますが、横を向いたり座ったりする場合もあります。お腹の体表に超音波検査用のゼリーを塗り、そこに探触子(プローブ)という機器を当てて検査を行います。プローブから超音波が発信され、反射されて返ってきたエコーを受信して画像処理をおこなうことで、臓器の状態を把握することができます(図1)。

検査に要する時間は10〜15分程度です。超音波は空気中では伝わりにくく、消化管に溜まった食物やガスなどがあると検査の妨げになってしまうことから、検査前の6時間は食事を抜いた上での検査が必要となります。胃・小腸・大腸は腹部超音波検査では観察することができません。

図1 腹部超音波診断装置;LOGIQ E10 (GEヘルスケアジャパン)

腹部超音波検査のメリットとデメリット

 腹部超音波検査は、病気の早期発見に非常に有用ですが、万能な検査ではありません。皮下脂肪や内臓脂肪が多かったり、お腹のガスが多い場合には、超音波は厚い脂肪やガスを通過できないため、観察できる部分が限られることがあります。

そのため胃の裏にある膵臓は一部、観察が難しい場合があります。その場合には、CT等の検査が適用となります。また腹部超音波検査は、検査を行う検査技師や医師の技量によって精度が左右されることがあります。

 しかし腹部超音波検査は、CTやMRIより優れている部分もあります。CTは放射線被曝の影響があること、MRIは閉所恐怖症や体内に埋め込み金属(ペースメーカーなど)のある方は検査を受けられないことがありますが、超音波検査にはそのようなことはありません。またCTやMRIよりも早期にがんを発見できる場合があります。これは、正常部分とがんとの境界が、超音波の方がはっきりと見えることがあるからです。

一方、CTやMRIでがんを早期に発見するためには、正常臓器とがんとの境界をはっきりと描出するために、造影剤の注射が必要になります。しかしこれにはアナフィラキシー・ショックや急性腎不全などの副作用の危険もあり、いつでも気軽におこなえる検査ではありません。がんの早期発見や診断には造影剤を使ったCT/MRI検査が最も優れていますが、“まず始めに行う検査”としては、腹部超音波検査は非常に有用です。

腹部超音波検査の所見

 腹部超音波検査をお勧めする症状として、腹痛、背部痛、体重減少、腹部違和感、健診での異常が挙げられます。特に、超音波検査でわかる膵臓の疾患は、膵がん、その他の膵臓腫瘤(良性、悪性)、膵炎(急性膵炎、慢性膵炎、自己免疫性膵炎)、膵石(慢性膵炎に伴う)、膵のう胞性疾患があります。

 それぞれの超音波検査での所見ですが、急性膵炎では,膵臓が腫れていたり、膵臓の周囲に液体が溜まっていたりします。慢性膵炎では、膵石の存在や膵管の不規則な拡張がみられたりします。また膵臓の辺縁が凸凹していて、一部が萎縮していたり、腫れていたりします。

自己免疫性膵炎では、膵臓全体がソーセージ様に腫れていたりします。膵のう胞性疾患では、様々な形状の嚢胞がみられます。膵がんでは、膵臓内に周囲より黒っぽい塊がみられます。またその境界は不明瞭でいびつに見えます(図2)。そしてその塊の尾側の膵管は拡張していることが多くみられます(図3)。これら超音波の特徴から次の精査となる検査に進んでいきます。

図2 膵がんの超音波検査所見1;腫瘤自体の描出

図3 膵がんの超音波検査所見2;腫瘤より尾側の拡張した膵管像

 

Q1膵臓の異常が疑われた場合、超音波検査以外にどんな検査がありますか?

血液検査の他に、画像検査では、造影剤を注射するCTやMRI、PET-CT検査、超音波内視鏡(EUS)という内視鏡検査があります。

Q2腹部超音波検査とCTやMRI検査との違いは何でしょうか?

腹部超音波検査は、CTやMRI検査と違って被曝の恐れもなく、痛みもない、受診者の負担の少ない検査で、安全に多くの情報を得ることができる検査です。しかし皮下脂肪や内臓脂肪、お腹のガスによって観察が難しかったり、施行者の技術によって精度が左右されることがあり、万能な検査ではありません。その際には、CTやMRIの検査が適用となります。

またがんの早期発見や診断・精査には造影剤を使ったCT/MRI検査が最も優れています。しかしCTやMRIでは、造影剤の注射を必要とするなど、受診者の負担も大きくなります。そのため、腹部超音波検査は、健康診断のスクリーニングやまず始めに行う検査として非常に有用な検査となります。

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