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膵がん

膵がんとは

 膵がんは、外分泌系がんと内分泌系がんに大きく2つに分かれ、外分泌系のがんが95%を占め、なかでも膵管の上皮から発生する膵管がんが最も多く、全体の85%を占めます。膵がんは男性に多いがんですが、わが国における罹患数・死亡数は男女ともに増加しています。膵がんの原因として、喫煙、糖尿病、慢性膵炎、家族性、肥満、前がん病変である膵嚢胞性病変が挙げられます。

 膵がんは、初期には無症状のことが多いため、早期に発見されるのは極めて難しいがんです。進行がんになりますと、上腹部痛、食欲不振、黄疸、体重減少などの症状を認めることがあります。

 膵がんの進行経路には、腫瘍周囲の重要な血管(腹腔動脈・上腸間膜動脈・門脈・下大静脈など)や他臓器への浸潤(図1)、リンパ行性転移、血行性転移(図2)、腹膜播種があります。膵がんの進行度により治療方針が大きく異なりますので、血管や臓器への浸潤程度や遠隔転移の確認に必要なさまざまな検査を受けていただく必要があります。また、膵がんに対して薬物治療を行う前には、内視鏡的検査による細胞診や組織診による病理学的確定診断が必要です。

図1 腹腔動脈や門脈浸潤を認める切除不能局所進行膵がん

図2 肝転移や腹水を認める切除不能進行膵がん

膵がんの治療

 膵がんの完治可能な唯一の治療法は、手術による切除のみですが、手術を行っても高頻度に再発や転移が生じます。これまで、国内外でさまざまな研究が行われ、膵がん患者さんの長期生存には、手術後の補助化学療法や手術前の化学療法や放射線治療が重要であることが分かっています。

さらに、近年では、化学療法の開発が向上し、さまざまな種類の薬物が膵がんに対して効果があり、たとえ初診時に手術ができないと診断されても、化学療法が非常によく効いた場合、その時点で手術を行うことで(コンバージョン手術)、完治を目指せることもあります。

 このように、膵がん患者さんの長期生存を目指すには、手術のみならず、薬物療法や放射線治療との組み合わせが必要で、治療期間は長期に及び、多大なる体力を要します。年齢とともに筋力が低下することをサルコペニアといいますが、サルコペニアの膵がん患者さんは、筋力の低下を認めない患者さんよりも予後が不良です。

また、ご高齢の患者さんではさまざまな併存疾患をお持ちの方も多くおられます。膵がんを克服するためには体力の増強がとても重要で、運動療法や栄養療法を併せることが必要です。

すなわち、膵がん治療には膵がんを専門とする内科医や外科医、放射線科医、病理医のほか、リハビリ医、糖尿病内科医、循環器内科、呼吸器内科、栄養士、理学療法士など様々なメディカルスタッフの団結による集学的治療が必要です。

 

Q1膵がんはなぜなるのですか。

膵がんの原因として、喫煙、糖尿病、慢性膵炎、家族性、肥満、前がん病変である膵嚢胞性病変などがありますが、各患者さんがなぜ膵がんになられたかは分かりません。臨床医の立場から申しますと、なぜ膵がんになったかを追求するよりも、これから膵がんを克服するための治療にしっかり取り組んでいただきたいと考えます。

Q2膵がんの早期発見には、どんな検査を受けたらいいですか?

膵がんは症状がでにくいため、早期発見は難しいです。検診のエコーで膵管の拡張や狭窄を認めた場合、検診の血液検査における腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の上昇を認めた場合、糖尿病が急に増悪した場合などに、造影CTや超音波内視鏡検査(EUS)による膵がんの精査を行うことで比較的早期の段階で膵がんが診断されます。

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