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血液検査

血液検査について

 血液検査で膵臓の酵素(膵酵素)や腫瘍マーカーの値を確認することで膵臓機能の異常や膵がんを発見できることがあります。

 膵臓でつくられる膵酵素は、体内の蛋白質や脂質の消化に関係し、アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどがあります。膵炎や膵がんでは、膵液が流れている膵管のつまりや膵臓の細胞が壊れることで、膵酵素が血液中にでてきます。そのため、血液検査でこれらの酵素が高値を示したときは、膵臓の病気の疑いがあります。

また、胆汁の通り道である胆管は膵臓の近くを走るため、膵炎や膵がんになると胆管がつまり、ALP、γ‐GTPなどの胆道系酵素やビリルビンの上昇が起こることがあります。このような結果が出たときは、胆道の病気だけでなく膵臓の異常も疑う必要があります。

 採血での腫瘍マーカー検査は、主にがん細胞によって作られる蛋白質などの物質を測定することで、がん診療の補助検査として用いられます。がんかどうかは、腫瘍マーカーの値だけでは診断できず、画像検査や病理検査などその他の検査の結果も併せて、医師が総合的に判断します。

膵がんが疑われたときは主にCEA、CA19-9が測定されますが、胃がん、大腸がん、肺がん、胆管がん、乳がんなどさまざまながんで上昇するため、必ずしも膵がんに限ったものではありません。腫瘍マーカーは膵がんの早期発見には適しませんが、膵がんの進行程度やがんに対する治療が効いているかどうかの判定には有用とされています。

 

Q1血液検査で測定される膵酵素はどのようなものがありますか?

血液検査の膵酵素は、膵臓に炎症が起こる急性膵炎や慢性膵炎で異常値を示します。膵がんでの膵酵素の異常率は20-50%であり、膵がんの診断にはあまり有用ではないと言われています。
血液検査で測定される主な膵酵素は以下のものがあります。

(1)アミラーゼ
アミラーゼは、デンプンを分解する酵素で、膵臓と唾液腺(だえきせん)でつくられています。アミラーゼを分泌する膵臓や唾液腺に障害が起こって詰まったときは、血液中や尿の中にもアミラーゼがもれ出てきます。

(2)リパーゼ
脂質を構成するエステル結合を分解する酵素です。

(3)トリプシン
蛋白質を分解する酵素です。蛋白質は、アミノ酸からなる長い分子鎖であり、それらを細胞内で分解するために、トリプシンが必要となります。

Q2膵がんに関係する腫瘍マーカーはどのようなものがありますか?

血液検査で測定できる膵がんに関係する腫瘍マーカーは以下のものがあります。

(1)CA19-9 (基準値 37.0 U/ml以下)
膵がんの患者さんの70-80%で上昇するとされています。日本人の10%にあたるLewis血液型陰性例ではCA19-9が生産されないため、偽陰性を示しますそのため、そういった患者ではCA19-9の前駆体(ぜんくたい)であるDUPAN-2やSpan-1などが測定されます。早期の膵がんでのCA19-9陽性率は55.6%であり、膵がんの早期診断にはあまり有用ではないと考えられています。

(2)CEA (基準値:5.0 ng/ml以下)
膵がんの患者さんの30-60%で上昇するとされています。膵がん以外のがんでも測定されることが多いです。

(3)DUPAN-2 (基準値 150 U/ml以下)
膵がんの患者さんの50-60%で上昇するとされています。前述のLewis血液型陰性例では有用とされていますが、膵がんだけが上昇するわけではなく、膵臓に病気がない方でも上昇することがあります。

(4)Span-1 (基準値 30 U/ml以下)
膵がんの検出感度は70-80%とされています。前述のLewis血液型陰性例では有用とされています。

(5)アポリポ蛋白A2(APOA2)アイソフォーム検査 (基準値 59.5 ng/ml以上)
血液中のAPOA2という蛋白は主に3つのタイプ(アイソフォーム)があり、一定に保たれていますが、膵がんではこのバランスが崩れます。このバランスを示す指標「APOA2-i Index」を用いて判定します。APOA2-i Indexは膵がん診断補助に有用とされていますが、基準値未満であっても、膵がんとは限らず、基準値以上であっても、膵がんではないとは限りません。

Q3膵臓の病気と糖尿病は関係すると聞きましたが、糖尿病はどのように診断するのでしょうか?

膵臓にはインスリン(血糖値を下げるホルモン)やグルカゴン(血糖値を上げるホルモン)を分泌し、血液中の血糖値を調整する働きをもっています。膵臓が悪くなるとインスリンの分泌や作用が低下するため、糖尿病を引き起こし、血糖値が上昇します。

新しく糖尿病と診断された場合や持病の糖尿病の状態が急に悪くなった場合は、膵炎や膵がんが発症していることもありますので、医師に相談してください。
血液検査での糖尿病の診断の目安を以下に示します。

(1)空腹時血糖値
食事真家の血糖値が最も低くなってきている状態の値を判定します。
正常値 80-99mg/dl
糖尿病予備軍 100-125mg/dl
糖尿病の可能性が高い 126mg/dl以上

(2)随時血糖値
ブドウ糖75gを水に溶かしたものを飲み、30分後、1時間後、2時間後に血糖値を測定します。食後のインスリンの効き方を判定します。
正常値 80-139mg/dl
糖尿病予備軍 140-199mg/dl
糖尿病の可能性が高い 200mg/dl以上

(3)HbA1c(ヘモグロビンA1c)
食事や運動などの影響を受けない過去1〜2ヵ月の血糖の平均値です。血糖値コントロールの目標値とされることが多いです。
正常値 5.9%以下
糖尿病予備軍 6.0〜6.4%
糖尿病の可能性が高い 6.5%以上

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