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自己免疫性膵炎

自己免疫性膵炎とは

 自己免疫性膵炎は、1995年にYoshidaらによって提唱された日本から発信された疾患概念です。

 それまでは膵がんが疑われ手術をしたらがんではなかったとき、腫瘤形成性膵炎と診断されてきました。その中に自己免疫性膵炎は含まれていたと考えられています。

 自己免疫性膵炎は、現在では血液検査でIgG4の値が上昇する1型とIgG4が関与しない2型の2種類があることがわかっています。しかし日本ではIgG4が関与する1型がその多くを占めていますので、日本で自己免疫性膵炎というとIgG4が関与する1型を指しています。また中高年の男性に多いとされています。

 この血液検査でIgG4が上昇している自己免疫性膵炎には、膵臓以外にも胆管、唾液腺、後腹膜、腎臓など様々な臓器にも病変が現れることがしばしばあり、現在ではこれらはIgG4関連疾患と名付けられ、自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患の膵病変とされています。
残念ながらこの増えたIgG4が何をしているのか、この病気がどうして起こるのかはわかっていません。

膵炎と名付けられていますが、いわゆる急性膵炎のように激しい痛みはなく多くの方は人間ドックのエコーで膵臓が腫れていた、糖尿病が見つかって検査をしていたら診断された、黄疸がでて検査をしていたらわかったという、あまり痛みがなく診断されるか痛みがあっても軽いことが多いということがわかっています。

 膵臓の腫れる部位によって、全体が腫れるびまん型と一部が腫れる限局型に分けられます。特に限局型は膵臓がんとの鑑別が重要になりますので、しっかり検査をする必要があります。

検査には、造影剤を使ったCT、MRI、胆管にも病変がある人では内視鏡的逆向性胆管膵管造影という内視鏡を使って胆管を造影し組織や細胞の検査をする検査、胃カメラの先にエコーの機械がついた超音波内視鏡というカメラを使って胃もしくは十二指腸から針を刺して膵臓の組織をとる検査(超音波内視鏡下穿刺吸引法)があります。あとの2つの内視鏡を使う検査は外来ではできませんので入院が必要です。

自己免疫性膵炎の治療

 自己免疫性膵炎はステロイドという免疫を抑える薬がよく効きます。ただステロイドを減らしたりやめたりすると、また病気が悪くなることが多いということが知られています。しかしステロイドは免疫を抑えますのでいろいろな感染症、糖尿病、白内障、骨粗鬆症などの合併症を伴うことがありますので、ステロイドの治療は一般的には3年を目安とされています。
再燃が疑われた場合は、まずがんではないことを確かめてからステロイドで再度治療をしなくてはいけません。

 自己免疫性膵炎は慢性膵炎とは別のものとされていますが、長期間経過すると慢性膵炎になってしまう人が一部にいることが知られています。
また膵臓がんの合併、IgG4関連疾患は様々ながんを合併することが普通の人より多いことが知られていますので気をつけておく必要があると思われます。

 

Q1血液検査でIgG4が高く膵臓が腫れていたら自己免疫性膵炎だと考えていいのでしょうか?

IgG4は膵がんの一部の人でも上がることが知られていますし膵がんと自己免疫性膵炎が同時に合併する症例があることも知られています。また喘息などのアレルギー疾患でも上がることが知られていますので、血清IgG4が高いから自己免疫性膵炎と考えるのは間違っています。

Q2自己免疫性膵炎は再燃しやすいと聞きましたが、その時はまた膵臓が腫れてくるのでしょうか?

膵臓がまた腫れる人が多いと思われますが、胆管、唾液腺、後腹膜、腎臓などIgG4関連疾患で認められる臓器はどこにでも病変がでることがあります。もちろん再燃だけでなく同時にいくつかの臓器に病変が現れることがあります。注意する点は治療して何年か経って膵臓がまた腫れたので検査をしたら膵がんだったということもよく見られるので、まずはがんではないことをはじめから検査することが大事です。

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