理事長挨拶

2016年8月3日に仙台市の国際センターで開催されました第47回日本膵臓学会の理事会で下瀬川 徹前理事長から御推薦を受け,理事・監事および評議員の皆様の御支援を賜り,日本膵臓学会の第9代理事長を拝命することになりました.1969年設立の日本膵臓病研究会を前身とする歴史と伝統ある学会であり,膵臓領域においては世界最多の会員を擁する本学会を率いる重責に身が引き締まる思いが致します.浅学非才ながら下瀬川前理事長の敷かれた路線を継承発展させ、本学会の更なる発展のために全身全霊をささげる所存ですので、今後とも会員の皆様の御支援を賜りますようお願い申し上げます。

私は昭和53年(1978年)に京都大学医学部を卒業し,大学での1年間の研修を経て2年余り奈良県にある天理よろづ相談所病院消化器内科で臨床修練をしました.そこで後年全国に先駆けて光学医療診療部を京都大学に創設した酒井正彦先生からERCPの手ほどきをうけました。特にシネERCPを用いた十二指腸乳頭部機能の動的解析には大変興味をもち膵臓病学を研究するきっかけになりました。その後、昭和56年(1981年)から平成6年(1994年)まで、郷里の高知県に新設された高知医科大学に赴任しましたが、この間メインテーマとして慢性膵炎、特に特発性慢性膵炎の病態解析について2つの観点から研究しました。ひとつは天理病院時代の知見をもとに膵管内圧・十二指腸乳頭部運動からの病態解析、もうひとつは免疫学的解析です。前者は母校から学位を授与される研究となり、また後者はライフワークでもある自己免疫性膵炎の研究につながっています。ERCPによる膵管内圧・乳頭部運動の検討ではヒトだけでなく犬や日本猿を用いた運動生理学解析とともに電気生理学的解析も行い、慢性膵炎の病態の一部を明らかにできました。一方、免疫学的解析については、藤本重義教授主宰の免疫学教室で山元 弘助教授(後年、大阪大学教授に転出)から免疫学の手ほどきをうけ、膵組織に対するモノクローナル抗体作成を介してCA-IIなどの疾患関連抗原を同定することができました。医学博士の学位取得後は昭和63年から平成2年までニューヨーク医科大学およびニュージャージー医科歯科大学に留学する機会に恵まれ、主に免疫生化学の研究に従事しました。帰国後は再び高知医大で「消化器と免疫」をキーワードに研究していましたが、自己免疫性膵炎の症例自体が極めて少ないため、臨床研究に行き詰まっていたところ、平成6年(1994年)に再び郷里を離れ天理よろづ相談所病院に内視鏡センター長として赴任することになりました。ただちにマイクロフィルムに保存されている開院以来の入院カルテから全膵炎症例を調べて、丁度1995年に東京女子医科大学の吉田憲司先生、土岐文武先生らの提唱した自己免疫性膵炎と思われる膵管狭細型膵炎8例に抗CA−II抗体などの疾患関連自己抗体の存在することを報告しました。平成8年(1996年)に酒井正彦先生の後任助教授として母校の消化器内科・光学医療診療部(千葉 勉教授主宰)に帰学し、内視鏡診療の責任者の傍ら、「消化器と免疫」をテーマとする研究室を立ち上げることができました。平成15年(2003年)に関西医科大学に赴任後も、自己免疫性膵炎に関する研究を中心に現在に至っています。

一方、高知医大時代より約30年間御指導頂いてきた厚生労働省難治性膵疾患調査研究班は,本学会のよきパートナーとして日本の膵臓病学の発展に大きく寄与してきました.私自身、本学会の自己免疫性膵炎委員会(旧自己免疫性膵炎診断基準委員会)委員長としてだけではなく、厚労省研究班における当該研究責任者の一人として、臨床診断基準や診療ガイドラインの作成・改訂に関わってきました。残念ながら,重症急性膵炎が難病指定を外れたことにより研究班は継続できなくなりましたが、今後本学会に課せられたミッションのひとつに、学会と厚労省研究班が行ってきた急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎に関する研究を継続発展することが挙げられるかと思っています。

日本膵臓学会は昭和44年(1969年)に日本膵臓病研究会(初代会長:青山 進先生)として設立後、関西医大学長の本庄一夫先生が第三代会長(現在の理事長)を務められていた昭和60年(1985年)には日本膵臓学会となり、昭和61年6月に機関誌「膵臓」が発刊されました。教室の初代教授の鮫島美子先生が当時本学会の事務局を担当されており、改めて教室と本学会との深い縁を感じております。学会化後は膵癌や急性・慢性膵炎の基礎的臨床的研究をはじめ、後年の自己免疫性膵炎やIPMNの研究に至るまで、本邦から新知見を世界に発信し続けており、国際的にも大きな信頼を得てきました。日本膵臓学会が今後さらに発展するためにも,社会貢献とともに国際化の更なる推進が極めて重要かと思います。前者においては特に認定指導医・指導施設制度の確立と普及が、また後者においては、第47回日本膵臓学会大会中に調印された日本膵臓学会と米国膵臓学会の姉妹学会提携を新機軸とし、国際的なリーダーシップの更なる発揮が重要であると思います。
 基礎と臨床,内科と外科の調和をもとに、下瀬川前理事長が敷かれたこれらの路線を継承発展させ、今後益々日本膵臓学会が発展するように努めることが私の使命と考えています。この目的に邁進するためにも今後とも皆様からの益々のご支援を賜りますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます.